技術戦略論2016.10.13

[前回の授業内容]技術戦略論2016.10.06
[次回の授業内容]技術戦略論2016.10.20
 
[今回の授業内容]
「ある企業が何ができ、何ができないか?」を直接的に制約=規定している要因は、企業が有している技術力や人的資源である。
 プログラム開発に関わる優れた技術力や人的資源が自社内にない場合には、「自社のハードウェア製品の動作に必要なソフトウェア」は他社に開発を依頼するとか、「自社の業務遂行に必要なソフトウェア」を自社開発するのではなく他社から購入するほかない。
 たとえば、ゲーム機というハードウェア製品はそのハードウェア製品上で動作するソフトウェア製品が必要不可欠である。自社にゲーム機に対応し、なおかつ、競合ソフトウェア会社に対抗できる優れたゲーム・ソフトウェアを開発する優れた技術力・人的資源が自社内になければ、他社製のソフトウェアに期待するしかない。
 銀行は自社の業務プロセスに関して最もよく知っているはずであるが、だからといって自社の業務のIT化に必要なハードウェアを新規開発できる技術力・人的資源や、ハードウェアを製造するための製造設備を自社の内部にもっているわけではない。また、優れた業務用ソフトウェアを開発するのに必要な技術力・人的資源を自社の内部に抱えているわけでもない。
 それゆえほとんどの銀行は、銀行業務のIT化に必要なハードウェアを自社で開発・製造もできないし、、自社の業務プロセスのIT化に対応したソフトウェアを自社で開発できない。その結果として業務のIT化は、他社まかせとなってしまっている。そのように他者任せの場合、すなわち、業務のIT化を外部資源に依存している場合には、優れた外部資源の囲い込み(他社を排除し、自社で独占すること)ができなければ、業務のIT化という歴史的機会において、他社に対する相対的競争優位を獲得することもできない・
価値規範(value)が企業の活動プロセス(process)を規定し、、活動プロセス(process)が企業がどのような資源(resource)を持つのかを規定している、というクリステンセンの主張を紹介した。
1. 松下電器(現Panasonic)におけるvalue-process-resource
Value 水道哲学 christensen_value_process_resource
Process 業務プロセスにおける低価格・高品質の最優先化
Resource 製品の低価格化・高品質化に強い人的資源や技術資源
より高度な生産技術(production technology)
補足的注意事項
現代では、「環境汚染」=「自然環境の悪化」にともない、松下幸之助が想定していた「水道」とは異なる「水道」になっている。松下幸之助が想定していたのは20世紀前半期における水道である。

松下幸之助の水道哲学は、下記のような松下幸之助の発言に基づく経営理念=value(価値規範)であり、「20世紀前半期における水道の水のように低価格で高品質な製品の大量供給する」ことを最も重視する考え方である。当時の水道水は、井戸水など良質な水源を利用することで処理コストを掛けずに低価格で供給できたことがある。川や湖などの水源の水質悪化が進めば進むほど、「劣悪な水」を「健康上問題がなく、飲用可能な水に変える」ための処理コストがかさむし、人口増大や産業発達にともなう水道利用量の増大、水道供給範囲の広域化にともなって安定水源確保のためのコストや送配水施設コストがかさむことになる。

東京都水道局「高度浄水処理について」
東京都水道局「安定した水源の確保」
東京都は2014年度に、水源の確保や浄水場などの施設の整備に約203億円を、送配水施設の整備に約935億円を支出している。これは料金収入3,290億円の1/3に相当する金額である。

カテゴリー: 2016技術戦略論, 技術戦略論, 授業メモ パーマリンク