情報公共論 2016.05.31

[前回の授業内容]情報公共論2016.05.24
[次回の授業内容]情報公共論2016.06.07
 
同種のgoodsを生産・提供している公営企業・NPOと営利企業の競合問題
非営利組織(公営企業・NPOなど営利を追求していない組織という広義の意味での非営利組織)と営利企業が、同種のgoodsを生産・提供している場合がある。こうした場合には、次のようなことが問題にされる場合がある。
同種のgoodsを生産・提供している営利企業が存在しているにも関わらず、非営利組織がそうしたgoodsを生産・提供することは「非営利組織による民への圧迫」と位置づけれることができるのではないか?すなわち、非営利組織の活動規模が大きくなればなるほど、営利企業の収益が悪化し、事業継続が困難になり、最悪の場合には営利企業の倒産が起きる、といった事態も予想される。
こうした問題は、いわゆる「官による民への圧迫」問題と同種の問題である。同問題が一般的に受容されている背景には、「民間営利企業ができることは、官のような公的組織ではなく、民間営利企業に任せた方がより効率的である」(官から民へ」「民間でできることは民間に」)という認識とともに、「税金などの公的資金を使った組織が、民間企業の営利活動を妨害するのは社会的に妥当ではない」といった認識があるからである。
 
[考察してみよう]
問題1 大学授業料問題
高等教育を提供している組織としては、国立大学のような公的組織と、私立大学のような民間非営利組織がある。国立大学の授業料は1960年代は年間12,000円と極めて低かった。1971年まで同金額であったが、国立大学授業料の受益者負担主義を打ち出した1971年の中教審答申(四六答申)に基づき,「私立大学との格差是正」をスローガンに授業料の継続的値上げが実施された。1971年後期にはまず授業料の3倍化が実施された。2015年度には国立大学の授業料の標準額は1970年度までの約45倍の553,800円となっている。
さて国立大学がさらに値上げを実施し、私立大学の授業料と同水準になれば、「官による民の圧迫」がなくなったというように、現象的には捉えることができる。
「実際にそのようにすることは社会的に妥当だろうか?」「大学授業料の問題はどのように考えるべきか?」ということを、給付型奨学金などの制度設計とも関連付けながら論じなさい。
 
 
問題2 NHK受信料問題
NHKと民放はどちらもデジタル地上波放送やBSデジタル放送というnon-excludableなgoodsとしての情報財を提供している。TVを持っている人から「強制的」に受信料を徴収しているNHKという非営利組織が必要な理由は何かを考察しなさい。
具体的には下記のような視点から考察をおこないなさい。
  1. 「NHKが視聴率の高い番組を制作・配信することは、民放の広告収入減をもたらす。これは、受信料収入に依存しているNHKという公的組織が民放という民間組織の業務を圧迫することであり、社会的に妥当なことではないのではないか?」
  2. 「NHKという公的組織の存在が、民放の業務を間接的であれ助けているといった側面はあるのか?」
  3. 「なぜ受信料をNHKだけが独占し、他の情報系非営利組織に配分しないのか?そうしたことは社会的に妥当とは言えないのではないか?(例えばインターネット経由で無料のニュース動画、教養系動画、高等教育系動画を提供している民間非営利組織の事業に配分すべきではないのか?例えば、NHK教育テレビと同種のgoodsを制作・提供しているMOOC(ムーク)事業creative commonsライセンスに基づく動画制作・配信事業に受信料を配分すべきではないのか?)」
  4. 「NHK受信料が高額であることが日本におけるTV市場の停滞を招き、日本のテレビメーカーの赤字および事業撤退をもたらしたのではないか?価格.comによれば、32インチTVの最安値は2016/5/31現在で23,500円である。32インチTVの価格よりも、NHKの衛星契約の口座振替による1年間前払のNHK受信料24,770円の方が高いのである。また50インチTVの最安値は2016/5/31現在で63,466円である。10年近くは使用可能と思われる50インチTVの価格はNHK受信料の3年分にも満たない。NHK受信料が減額あるいはゼロになれば、日本でもっとTVが数多く売れるようになるのではないか?NHKの受信料はテレビメーカーの事業を圧迫していると言うべきではないのか?」
  5. 「NHK以外の様々な組織体が、NHKが提供しているのと同種の公共的情報財を制作・配信している。こうした状況下においてNHKの存在意義はどこにあるのか?NHKが他の組織体にはできない公共的情報財を提供しているのか?提供しているとすれば、それはどのようなものなのか?」
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