経路依存性(path-dependency)現象 —- 過去の技術的選択による現在的制約

鉄道経営に関する経路依存性
過去の技術的選択が、企業経営の現在的あり方を制約している。鉄道経営に関する経路依存性に関しては次のような問いを考えてみれば良いであろう。

問1 東京都心部の地下鉄のうち、東京地下鉄株式会社(旧称:帝都高速度交通営団)が経営する東京メトロの銀座線・丸ノ内線および東京都交通局が経営する都営地下鉄の大江戸線を除くすべての路線で郊外鉄道との直通運転が実施されている。ではなぜ、銀座線・丸ノ内線及び大江戸線では郊外鉄道との直通運転が実施されていないのか?その理由を調べなさい。(なお2014年時点で東京圏の相直路線延長は約880kmで、東京圏の鉄道総延長1,520Kmの約36%を占めるまでになっている。)
問2 渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線(12.7km)は渋谷が終点駅となっている。また渋谷と浅草を結ぶ営団地下鉄銀座線[1927年に浅草 – 上野間で営業を開始した日本で最初の地下鉄。現在の路線距離:14.3km]も渋谷が終点駅となっている。渋谷駅で京王井の頭線と、東京メトロ・銀座線が直通運転で結ばればとても便利と思われるが、直通運転の計画はない。それはなぜか?
問3 京王電鉄は、新宿で京王線と都営新宿線と直通運転を行っている。しかし京王高尾線は高尾駅でJRと直通運転していないし、都営新宿線はその終点の本八幡駅でJRと直通運転をしていない。それはなぜか?
1927年開業の銀座線の軌間(ゲージ)は、丸の内線と同じく1,435 mmである。これに対して、帝都電鉄株式会社が1933年に開業した井の頭線[1933年8月1日に渋谷駅 – 井の頭公園駅間を開業させ、1934年4月1日に吉祥寺駅まで全通させた]の軌間(ゲージ)は1,067mmである。井の頭線が小田急電鉄系の帝都電鉄の路線として開業したため、小田急電鉄の軌間と同じにされた。そうしたこともあり、戦時中から戦後しばらくは小田急小田原線と代田連絡線を介して繋がっていたが、同連絡線の廃止後は他路線と線路が繋がっておらず、独立した路線となっている。[帝都電鉄は、小田原急行鉄道(現、小田急電鉄の前身)を経営していた利光鶴松の傘下にあった。帝都電鉄は1940年に小田急に統合されている。1942年には小田急電鉄株式会社が京浜電気鉄道と共に東京横浜電鉄に合併し、東京急行電鉄株式会社が成立。小田急帝都線は東急井の頭線となった1944年には京王電気軌道株式会社も東京急行電鉄株式会社に合併されている。1947年12月に東京急行電鉄株式会社から京王帝都電鉄株式会社・小田急電鉄株式会社・京浜急行電鉄株式会社が分離することが決定され、1948年に京王線と井の頭線は京王帝都電鉄株式会社として東京急行電鉄株式会社(東急)から分離された。]
京王電気軌道株式会社が、1913年4月に笹塚駅 – 調布駅間の12.2キロの営業を開始した。この時の軌間が1,372 mm(馬車軌)であった。玉南電気鉄道株式会社が、1925年3月に府中駅 – 京王八王子駅間を営業開始した。この時の軌間が1,067 mmであった。その後、1926年12月1日に京王電気軌道が玉南電気鉄道を併合し、直通運転を可能とするため、軌間を1,067 mm から1,372 mm へ改軌した。(工事終了は1927年6月。新宿-京王八王子間の直通運転開始は1928年5月。)こうした改軌は、その後、都営浅草線および京浜急行電鉄への乗り入れを実施した京成電鉄が子会社の新京成電鉄と共に1959年に1,372 mmから1,435mmへの改軌を実施している。京王線も都営新宿線との直通運転計画に際して、1,372 mmから1435mmへの改軌を打診されたが、実行していない。
[関連参考資料]
  1. 東京都公文書館編(1989)『東京馬車鉄道j](都史紀要33)
  2. 青木栄一(2002)「3フィート6インチ・ゲージ採用についてのノート」『文化情報学:駿河台大学文化情報学部紀要』第9巻第1号
  3. 「井の頭線、消えた延伸計画と「日本一」の三鷹球場」日経電子版、2013年6月14日
  4. 杉山淳一(2012)「銀座線にも相互乗り入れ計画があった」マイナビニュースの連載:鉄道トリビア
  5. 国土交通省(2014)「東京圏の都市鉄道に係る答申のフォローアップ等について」平成26年度第1回(第10回)交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 資料2-1
  6. 「東京圏における都市鉄道の現状と課題について(補足資料)」平成26年度第1回(第10回)交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 参考資料1
  7. 国土交通省(2016)「速達性の向上の現状と今後の取組のあり方について」国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 第16回 配付資料4-2
  8. 国土交通省(2016)「シームレス化の現状と今後の取組のあり方について」国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 第16回 配付資料4-3
  9. 「国交省資料で見えてきた東京圏「次の新線」。JR羽田アクセス線と地下鉄品川線、豊住線は有力か。りんかい線・京葉線直通にも可能性」旅行総合研究所タビリス2016/01/21
  10. 松田康治(2001)「東京圏における相互直通運転の効果と課題」土木学会第56回年次学術講演会
  11. 家田仁(2005)「都市鉄道における軌間の異なる路線間の直通運転の可能性」鉄道整備等基調調査報告シンポジウム 第3回「活力ある暮らしを支える鉄道を目指して」
  12. 金子雄一郎・伊東誠(2007)「鉄道整備事業の事後評価手法に関する諸検討-実際の評価の経験を踏まえて-」『運輸政策研究』Vol.10 No.3
 
[参考資料]
医療制度に関する経路依存性
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