技術戦略論2015.12.10

[前回の授業内容]技術戦略論2015.12.03
[次回の授業内容]技術戦略論2015.12.17
1.技術的過渡期におけるハイブリッド製品の登場
 
「製品技術」(product technology) vs 「生産技術」(production technology)
技術のS字曲線的発展を具体的事例で考える場合には、「製品技術」 vs 「生産技術」という技術に関する二種類の区別に基づく下記のような論点を理解しておく必要がある。
 
1) 新世代機は、研究開発開始時点では旧世代機よりも「性能が低い」。また性能的に対抗できるようになった時点でも「コストが高い」
研究開発に十分な時間や投資をかけた旧世代「製品技術」に基づく製品は、研究開発が始まったばかりで十分な時間や投資がかけられてはいない新世代「製品技術」に基づく製品よりも性能が高いことが多い。下記の図で言えば、新世代「製品技術」に基づく製品開発が始まったばかりのt1時点では、旧世代「製品技術」に基づく製品の性能P1の方が、新世代「製品技術」に基づく製品の性能P2よりも高い、ということである。
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研究開発時間および研究開発投資の増加とともに、新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代「製品技術」に基づく製品の性能に追いつき、やがて追い越すようになる。下記の図で言えば、t2時点で新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代に追いつき、t3時点では新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代「製品技術」に基づく製品の性能よりも有意味に高くなっている。
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しかし、製品の製造コスト低減に関わる「生産技術」(production technology)のS字曲線的発展は、アッターバックのドミナント・デザイン論でも論じられていたように、製品の新機能や性能向上の実現に関わる「製品技術」(product technology)のS字曲線的発展よりも遅れる。
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そのため新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代に追いついたt2時点では、新世代「製品技術」に基づく製品に関する「生産技術」の発展がまだ十分にはなされてはいないため、コスト的には新世代製品は旧世代製品よりも劣っている。
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さらなる研究開発時間や研究開発投資の継続により、そのため新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代を追い抜くとともに、新世代「製品技術」に基づく製品に関する「生産技術」の発展により新世代製品が旧世代製品とコスト的に対抗できるようになるt3時点が到来する。
 
図1 製品の性能向上曲線 図2 製品の低コスト化度曲線
製品の性能向上曲線 製品の低コスト化度曲線
 
 
 
2) 旧世代「製品技術」に基づく互換性の確保、旧世代製品に関する「生産技術」に基づく低コスト性の実現、および、 新世代「製品技術」に基づく高性能性の実現を目標とするハイブリッド製品
図3 蒸気機関と水車のハイブリッド製品 図4 帆と蒸気動力機関のハイブリッド製品としての黒船
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2.性能向上と互換性維持の同時達成を目指す4種類の両立戦略
 
(1) 両立戦略(その1)— 新規ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +旧世代ハードウェア・モジュール利用による互換性確保
(2) 両立戦略(その2)— 既存高性能ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +旧世代ハードウェア・モジュール利用による互換性確保
(3) 両立戦略(その3)— 既存高性能ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +エミュレーション・ソフト新規開発による互換性確保
(4) 両立戦略(その4)— 新規ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +エミュレーション・ソフト新規開発による互換性確保
 
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