経営技術論2015.07.09

[前回の授業概要]経営技術論2015.07.02 [pdf版]
[次回の授業概要]経営技術論2015.07.16
 
[今回の授業のポイントおよび前回の授業の補足]
1 自動車に関わる補完財的バンドワゴン効果
ガソリン自動車とガソリンスタンド、電気自動車と充電スタンド、燃料電池車と水素ステーションは互いに補完的である。
 

1) 実際に走行している自動車としては、ガソリン自動車などガソリンを必要とする自動車が最も普及している。(非ブラグイン型ハイブリッド自動車も燃料としてガソリンを必要とする。電気自動車の普及台数は少ない。燃料電池車の普及台数はもっと小さい。)
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2) ガソリン補給(ガソリンスタンド)に対する需要が最も大きい。電気補給(充電スタンド)や水素補給(水素ステーション)の需要はかなり小さい。(ガソリン補給に対する需要が、電気自動車に対する充電の需要や、燃料電池車に対する水素補給の需要よりもかなり大きい。)、
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3) 需要が大きいほど、供給業者の数も多い。すなわち、ガソリンスタンドの数は、充電スタンドや水素ステーションよりも圧倒的に多い。市場規模の小さい充電スタンドや水素ステーションの普及はなかなか進まない。
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4) 補給という「補完財」の競争力は、電気自動車や燃料電池車よりもガソリン自動車の方が高い。
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5) このことが電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及に立ちはだかる壁となり、電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及が遅れる。
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6) 電気自動車や燃料電池車の普及台数が小さいため、充電スタンドや水素ステーションの普及がなかなか進まない。
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7) 充電スタンドや水素ステーションの普及がなかなか進まないため、補給という「補完財」の競争力において、電気自動車や燃料電池車はガソリン自動車に比べてかなり低い。
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5’) このことが電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及に立ちはだかる壁となり、電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及が遅れる。
(以下、「電気自動車や燃料電池車の普及が進まないので、充電スタンドや水素ステーションの普及が進まない。」→「充電スタンドや水素ステーションが進まないので、電気自動車や燃料電池車の普及の普及が進まない。」という「鶏と卵」的循環が続くことになる。)

 
 上記のような議論から考えれば、電気自動車の社会的普及のためには、電気自動車という「製品本体」に関する製品イノベーションやプロセスイノベーションによる性能向上やコスト低減も重要であるが、その一方でまた、充電スタンドという「補完財」の社会的普及も必要不可欠である。
 充電スタンドという「補完財」の社会的普及は下記のように、24時間営業のコンビニやへの充電器の設置など様々な形で追及されている。その結果としてCHAdeMO協議会(2015)「急速充電器都道府県別一覧」によれば、急速充電器の設置個所数は日本全国で4,870箇所(2015/06/30現在)となり、長期的現象を続けているガソリンスタンド数34,706か所(2013年度末現在)の約1/7にまでに達している。
 なお株式会社ゴーゴーラボ「GoGoEV」によれば、2015年7月現在で登録充電スタンド数は、普通が9262ヶ所、急速が5845ヶ所(前月新規充電スタンド数
普通482ヶ所、急速78ヶ所)となっている。
 ガソリンスタンド数の減少傾向および充電スタンド数の増加傾向がこのまま続けば、やがて両者が同じになり、逆転する日もさほど遠くはない。
 
 
[ガソリンスタンド数の減少傾向]
ガソリンスタンドの数は、経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課(2014)『揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)』によれば、長期間にわたり減少を続け2013年度末で34,706か所にまで減っている。
なおJX日鉱日石エネルギー「主要国の給油所数の推移」『石油便覧』資料・参考図の表20によれば、ガソリンスタンド数の減少は日本だけの現象ではない。下記のように、米国、英国、フランス、ドイツでもかなり減少している。
日本 米国 英国 ドイツ フランス
1975 52,789 279,090 31,426 33,123 45,000
1985 59,082 21,140 18,179 32,000
1995 59,990 190,246 16,244 17,957 18,406
2005 47,584 167,476 9,764 15,187 13,570
2012 36,349 152,995 8,714 14,328 11,168
 
[燃料電池車に関する参考資料]
 
[TIPS的情報(その1) — 水素ガスを充填したツェッペリン型飛行船の爆発事故]
ヒンデンブルク号爆発事故(1937年)の瞬間。この事故の社会的衝撃により飛行船の安全性に対する社会的信頼がなくなり、飛行船の社会的普及が停滞した。
 
[水素ガスを充填したツェッペリン型飛行船の爆発事故関連資料]
 
[TIPS的情報(その2) — 飛行船によるインターネット網]
 
2. 「VTR(Video Tape Recorder)」と「レンタルビデオ」という相互補完的製品における補完財的バンドワゴン効果の時期的変化
補完財が競合製品間で共通な場合(共通補完財、汎用的補完財の場合)
1970年代後半期におけるVTR製品の主要な補完財は、スポーツ中継やTV映画などTV番組(放送コンテンツ)であった。TV番組は、VHS(Video Home System)型VTRとβ(Betamax)型VTRという競合製品がそうであるように、競合製品間で補完財製品が共通であれば、補完財製品が競合製品の競争関係に影響を与えることはない。
録画用ビデオテープは、製品としてはVHS「専用」テープとβ「専用」テープというように専用補完財となっている。しかしVHS「専用」テープとβ「専用」テープとでは性能などで技術的には差はない。両者はともに幅が1/2インチの磁気テープである。大きさが違うのは、βのテープ長が150mであるのに、VHSのテープ長が248mとかなり長いためである。また売り切り用
1980年代以降になるとTV番組と並ぶ主要な補完財として、レンタルビデオが登場することになる。のVHSとβという競合製品に対するそれぞれの専用レンタルビデオ市場の登場がそうであるように、競合製品に対する補完財製品がそれぞれの競合製品に専用の製品である場合には、補完財的バンドワゴン効果によって製品本体の製品競争力に大きな影響を与えることになる。
 
 
3. ゲーム専用機とゲームソフトという相互補完的製品における補完財的バンドワゴン効果
 
(1) 製品本体の性能は変化していないにも関わらず、市場シェアが大きく変動する例としての、日本における8ビットゲーム専用機市場におけるシェア推移1983-1986

   1983 1984 1985 1986
任天堂:ファミコン 68.8% 87.0% 92.5% 95.3%
セガ:SG-1000 31.3% 13.0% 7.5% 4.7%
 
(2) 製品本体の性能は変化していないにも関わらず、市場シェアが大きく変動する例としての、日本国内におけるゲーム専用機の機種別週間販売台数の推移(2015/05/11-6/21
Wii_U-PS4-2015-06
   5/11-5/17 5/18-5/24 5/25-5/31 6/1-6/7 6/8-6/14 6/15-6/21
Wii U 6,698 6,836 15,787 17,104 16,740 14,868
Splatoon 156,610 81,764 60,175 50,008
PS4 10,945 10,846 11,327 10,137 10,117 12,748
PS3 2,663 2,426 2,708 2,444 2,326 2,448
XBOX One 155 252 348 248 118 178
New 3DS 14,486 13,859 14,638 15,764 23,976 21,176
リズム天国 155,784 69,512
PS Vita 11,335 11,141 13,408 11,594 11,022 11,535
3DS 1,524 1,622 1,703 1,740 1,794 3,102
 
Wii Uの週間販売台数が5/25-5/31の週にそれ以前の2倍以上に伸びた理由としては、Splatoon(任天堂)というWii U専用ソフトが5/28に販売開始されたことが大きい、と考えられる。
New 3DSの週間販売台数が6/8-6/14の週にそれ以前の5割以上も増加した理由としては、リズム天国 ザ・ベスト+(任天堂)やドラゴンボールZ 超究極武闘伝(バンダイナムコ)といった3DS専用ソフトが6/11に販売開始されたことが大きい、と考えられる。
 
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