技術戦略論2014.11.28

[前回の授業内容]技術戦略論2014.11.21
[次回の授業内容]技術戦略論2014.12.5
[今週の授業内容]「互換性維持を最優先」とする新製品開発と「飛躍的性能向上を最優先」とする新製品開発のトレードオフ関係(再論)
 
ゲーム専用機の新製品開発においては、ゲーム専用機という製品にはPCと異なる固有の製品特性があることを考慮した戦略の採用が必要である。(ゲーム専用機という製品に固有の製品特性の存在は、任天堂やセガが1983年に、ポーター的な意味でのFocus戦略を採用することの合理性の根拠でもある。)
 
1.次世代製品開発(製品イノベーション)における「互換性維持」と「大幅な性能向上」のトレードオフ関係に対する二つの基本的対応
 

a. 「大幅性能向上」重視戦略 — 飛躍的性能向上を最優先とする次世代製品開発
ex.1 ソニーのPSPという新世代製品開発
ex.2 PS2からPS3への製品イノベーションという新世代製品開発
ex.3 スーファミから任天堂N64への製品イノベーションという新世代製品開発
、GAMECUBE など
 
b. 「互換性維持」重視戦略 — 前世代製品との互換性維持を最優先とする次世代製品開発
ex.1 GamecubeからWiiへの製品イノベーションという新世代製品開発
 
2.区別すべき2種類の互換性問題
a. 「同世代」間互換性問題 — 同世代に属する競合製品間での互換性の確保問題
ex.1 1/2インチ幅ビデオ・カセットテープ型世代のVTR製品のVHSとβにおける「テープ素材・テープ幅の共通性」と「録音・再生方式における互換性の欠如」
(アメリカではVCR(Video Cassette Recorder)と呼ばれている
ex.2 「G1規格」世代に属するFAX製品における機種間互換性の欠如
ex.3 8ビット世代に属するCPU製品 — Intel社の8008, 8080, 8085, 8088およびZilog社のZ80といった製品間での互換性の確保、および、それら製品群と互換性のないMotorola社の6800およびMos Technology社の6502
[考察してみよう]
1) 上記の例でex.2だけが他の事例と互換性の意味が少し異なる。それはどういう意味においてであるか?
2) ソフトウェアは大別すると、プログラム系ソフトウェアとコンテンツ系ソフトウェアに分けることができる。上記の例の内でそうした視点から論じることができるものを挙げてみよう。またアナログ地上波放送専用TVからデジタル地上波放送対応TVへの製品イノベーションをそうした視点を踏まえて考察してみよう。

b. 「異世代」間互換性問題 — 次世代製品開発(製品イノベーション)における互換性の確保問題
ex.1 カセットウォークマンからCDウォークマンへの製品イノベーション
ex.2 CD-ROMドライブからDVD-ROMドライブへの製品イノベーション
ex.3 DVD-ROMドライブからブルーレイディスク・ドライブへの製品イノベーション

[考察してみよう]
上記の例と少し異なるが、紙パック式電気掃除機からサイクロン掃除機への製品イノベーションも「互換性」視点から論じることができる。

 

3.区別すべき2種類の互換性問題に関する、「補完財に関するバンドワゴン効果」論からの考察
a. 同世代製品間競争における「補完財に関するバンドワゴン効果」問題 —- 同一世代に属する「ハードウェア」製品と「ソフトウェア」製品の相互補完性に起因するバンドワゴン効果問題
1983年発売の任天堂・ファミコンとセガ・SG-1000という同世代製品間競争における同世代的バンドワゴン効果

家庭用ゲーム専用機なしで家庭用ゲームソフトウェアを動かすことはできない。同じく、家庭用ゲームソフトウェアなしで家庭用ゲーム専用機でゲームすることはできない。
  ↓
すなわち家庭用ゲーム専用機というハードウェアと、家庭用ゲームソフトウェアは相互補完的関係にある。そのため家庭用ゲーム専用機というハードウェアの販売台数が増加すればするほど、そのマシンに「対応」した家庭用ゲームソフトウェアの販売本数は増加する。またその逆に、ある家庭用ゲーム専用機「専用」のゲームソフトの種類が増加すればするほど、あるいは、ある家庭用ゲーム専用機「専用」の極めて優れたソフトウェアが開発されればされるほどハードウェアの販売台数が増加する。
   ↓
そうした意味で、家庭用ゲーム専用機はゲームソフトウェアの補完財であるし、家庭用ゲームソフトウェアは家庭用ゲーム専用機の補完財である。
   ↓
1) 累積販売台数が多いゲーム専用機ほど、ゲームソフトの販売本数がより多いと期待できる(あるいは原則としてゲーム専用機の累積販売台数以上にゲームソフトが売れることはない)。そのためゲームソフト会社はより累積販売台数が多いゲーム専用機(または累積販売台数が多くなると期待できるゲーム専用機)に対応したゲームソフト製品を開発しようとするインセンティブを持つ。
2) 優れた対応ゲームソフトが多種類あるゲーム機ほど、ゲーム専用機間の製品間競争で優位性を持つ。
 

b. 新世代製品間競争における「補完財に関するバンドワゴン効果」問題
b-1. 家庭用ゲーム専用機の新世代製品「開発」において「互換性維持」重視戦略を採用した場合には、下記のようなリソースを補完財として利用することが可能になる。

1) 新世代製品「開発」に利用可能なリソースとしての、旧世代製品「開発」関連の知識・熟練・開発ツール・開発マシン
2) 新世代製品「製造」に利用可能なリソースとしての、旧世代製品「製造」関連の知識・熟練・製造設備
 

 

b-2. 家庭用ゲーム専用機の新世代製品「開発」において「大幅性能向上」重視戦略を採用した場合には、radical innovationにより旧世代機との互換性維持が難しくなるため、下記のようなリソースを補完財として利用することが困難になる。

1) 「利用」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機専用ソフトウェア)
2) 「開発」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機に関わる開発のための知識・熟練・開発ツール・開発マシン)
3) 「製造」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機に関わる製造のための知識・熟練・製造設備)

具体的考察に際しては、開発者に関してソフトウェア開発者とハードウェア開発者に分けて考える必要がある。
 

 

カテゴリー: 2014技術戦略論, 技術戦略論, 授業メモ パーマリンク