情報公共論2014.07.01

[前回の授業内容]情報公共論 2014.06.24
[次回の授業内容]情報公共論 2014.07.08
 
[配付資料]
著作権法の保護対象となるためには、「思想又は感情」が表現された著作物でなければならない。
自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータをまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。
 原告は、本件データは原告が独自に取材、調査し、それを総合的に判断し研究した結果であり、そこには原告の思想が創作的に表現されていると主張する。しかし、原告が主張していることは、原告の一定の理念あるいは思想のもとに本件データの集積行為が行われたということにすぎないのであって、集積された客観的データ自体が思想性を帯びることはないから、原告の右主張は失当というべきである。
 よって、本件データは著作物性を有しない。ものでなければならない。
 しかしながら、本件データは、自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータをまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。
 原告は、本件データは原告が独自に取材、調査し、それを総合的に判断し研究した結果であり、そこには原告の思想が創作的に表現されていると主張する。しかし、原告が主張していることは、原告の一定の理念あるいは思想のもとに本件データの集積行為が行われたということにすぎないのであって、集積された客観的データ自体が思想性を帯びることはないから、原告の右主張は失当というべきである。
 よって、本件データは著作物性を有しない。
 
3.文化庁著作権課(2013)「著作権法の基本的な枠組みについて(オープンデータ関連) 」2013年1月24日の1.「政府が保有するデータ」
著作物は、「思想又は感情」を表現したものであるから、単なる事実やデータは、それ自体としては、著作物としての保護対象にはならず、例え当該データ等を得るために高度の知識や多大な労力、資金を必要としたとしても、著作物としての保護対象にはならない。
 
 
「オープンデータ(Open Data)とは、特定のデータが、一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が望むように利用・再掲載できるような形で入手できるべきであるというアイデアである。オープンデータ運動のゴールは、オープンソース、オープンコンテント、オープンアクセスなどの、他の「オープン」運動と似ている。オープンデータを支える哲学は古くから確立されているが(マートン・テーゼのように)、「オープンデータ」という言葉自体は、インターネットやワールドワイドウェブの興隆、特に、Data.govのようなオープンデータガバメントイニシアティブによって、近年一般的になってきた。」

[考えてみよう]単なる事実やデータは、それ自体としては、著作物としての保護対象にはならない。それにも関わらず、オープンデータ運動がなぜ運動として必要なのかを考察してみよう。

[6/17配付資料の見出し]

 

1. 創作性の定義 — 「思想又は感情を創作的に表現したもの」 に関わる諸解釈・・・・1
 
2. 原告の著作物適格性問題・・・・2

(1) 「個性」説・・・・3
 
(2) 「独立創作」説(非模倣説、非依存説)・・・・3
a.「独立創作」説に基づく主張・・・・3
著作物性に関するファンシーツダ対オムニツダ事件第一審(1988)における原告人の主張・・・・3
b.「独立創作」説の関連判例・・・・3
著作物性に関するファンシーツダ対オムニツダ事件第一審(1988)における判決・・・・3
 
(3) 「表現の選択の幅」説・・・・4
a.「表現の選択の幅」説の主張・・・・4
システムサイエンス事件における1審原告=2審抗告人の主張—1審判決への批判[「表現の幅」説に立つことは同一であるが、表現の幅がないとする事実認定に関して異議を唱えている。]・・・・4
「表現の選択の幅」説の関連判決・・・・4
大阪地判昭54・2・23判タ387号145頁(冷蔵倉庫設計図事件)および東京高判昭60・11・14無体裁集17巻3号544頁(アメリカ語要語集事件) —- 中山信弘(2007)『著作権法』有斐閣,p.54の注56・・・・4
システムサイエンス事件に関する東京地裁の判断(1989)(東京地裁平成元年3月31日決定・判例時報1322号p.141,著作権関係判例集Ⅷp.116) [「表現の幅」説に立ち、表現の幅がないという事実認定をおこなっている。]・・・・4
関連判例・・・・5
システムサイエンス事件に関する東京高裁の判決(平成元年6月20日決定・判例時報1322号p.138,著作権関係判例集Ⅷp.126,著作権判例百選く第2版〉p.58)[1審と同じく、「表現の幅」説に立ち、「本来的に同様の組み合わせにならざるを得ない」など表現の幅がないという事実認定をおこなっている。]・・・・5
 
(4) 「アイデア等の平凡な表現」に創作性が認められないとする見解・・・・5

a. 「アイデア等の平凡な表現」に創作性が認められないとする説の主張・・・・5
金井重彦(2007)『デジタル・コンテンツ著作権の基礎知識』pp.23-26・・・・5
b.「アイデア等の平凡な表現」に創作性が認められないとする関連判決・・・・6
「『ラストメッセージin最終号』事件」(1995)平成7年12月18日東京地方裁判所(平成6(ワ)9532) — 休廃刊雑誌の最終号における挨拶文の著作物性・・・・6
山本隆司(1990)「著作権法における「創作性」の概念とマージ理論」(『NBL』456号、1990、p.27)において「アイデア等の平凡な表現」に創作性が認めていない判決として挙げられている判決・・・・6
中山信弘(2007)『著作権法』有斐閣,p.50・・・・7
 

(5) 「独創性と創造性の二重性」説(創造的独立創作性説、普遍的二重性説)・・・・8
a. 創造性のない著作は著作物ではない —- 「個性の発露としての創造性が必要である」とする主張・・・・8
 
(6) 「ダブルスタンダード」説 — プログラム著作物に対する特殊的取り扱い・・・・8

a.「ダブルスタンダード」説に基づく主張 — プログラム著作物に対する著作権法における創造性の要件 — 特許法における「進歩性」の要件に相当するものがプログラム著作物に対しては必要とされる・・・・8
中山信弘(1988)「ソフトウェアの法的保護:侵害を中心として」『法曹時報』40巻9号、p.26における問題提起 —「著作物として、プログラムは文学や絵画とは異なる」とする主張・・・・8
コンピュータ・プログラムの特殊性を考慮し、創造性のレベルを理由として著作物性を否認する」主張 — ファンシーツダ対オムニツダ事件第一審(1988)における被告人の主張・・・・8
「システムサイエンス」事件(東京高裁平成元年6月20日決定・判例時報1322号p.138)の判決に関するダブル・スタンダード説的解釈・・・・9

b.ダブルスタンダード説>関連事例>「取るに足らないようなプログラムには独占権を与えない、著作権を与えないという判決」としての、ドイツ最高裁の1985年判決 – インカッソプログラム(Inkassoprogramm)事件・・・・10
e. ダブルスタンダード説>関連事例>英国著作権法におけるoriginal 規定— 伝統的には「独自の技能と努力(『独創性』)」(independent skill and effort (、originality、)、しかし1988年創設のデータベース権に関しては創作的(creative)であることも必要となった。・・・・11
 

3. 著作に創造性が必要とする主張に関連する事例>応用美術に必要とされる創作性の高度性・・・・12
 
4. 文献資料・・・・14
中山信弘(2007)『著作権法』有斐閣,pp.49-68・・・・14
(1) 従来の創作性概念・・・・14
(2) 新しい創作性概念・・・・15
(3) 思想と表現の混同(マージャーmerger)・ありふれた表現・・・・17

 

[今回の授業内容のポイント]
A.創作性がない著作物 vs 創作性がある著作物 — 客観的事実や調査データに創作性はあるのか?

著作権法の第十条の2「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」とは、「いわゆる人事往来、死亡記事、火事、交通事故に関する日々のニュース等単に事実をら列したにすぎない記事」を指すものであり、一般の報道記事や報道写真はそれに該当しない、としている。
というのも一般の報道記事や報道写真は下記のように「記者の個性を反映した表現」を含むからである。

「解説記事はもちろん、一般のニュース記事も、通常はその事実を伝える記者の価値判断、視点を伴っており、また、背景説明や、取材の過程で見聞した事実を取捨選択し、記者の個性を反映した表現で書かれています。」
 
なお下記のように、故人にどのような業績があったのかに触れた死亡記事や、事故の背景や周辺の様子などを記述した交通事故の記事には「記者ごとの特徴」が反映されているので、創作性があり、法的保護の対象となるとしている。
 
「「だれが、いつ、どこで、どんな死因で、死去した。何歳だった」というだけの死亡記事や、「いつ、どこで、だれの車が、だれそれの車と衝突し、だれそれは重傷」といった簡単な交通事故の記事は、公式に発表された事実関係だけを記述しただけですから、だれが書いても、あるいはどの新聞社が記事にしても、記事の書き方にはほとんど差がありません。
しかし、死亡記事であっても、故人がどんな人で、どのような業績があったのかに触れたり故人を追悼する気持ちを出そうとしたものや、交通事故でも事故の背景や周辺の様子などを記述していれば、単なる事実の伝達を超え、記者ごとの特徴を反映した記事になります。

なお本記事の毎日新聞社「ニュース記事には、著作権が働いています」という文書は、下記の日本新聞協会編集委員会(1997)「ネットワーク上の著作権について ―― 新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に」1997年11月という文書の一部と同一であるが、そのことに関する表記がない。
著作権を取り上げている記事にも関わらずそうであるのはあまり適切とは思えない。

 

2.東京地裁(1992)「コムライン事件判決」平成4年(ワ)第2085号

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/0764EDAE64F0FC0949256A7600272B95.pdf
http://www.law.co.jp/cases/comline.htm

五1 被告は、被告文章は、各種の取材源から著作権の及ばない生の事実だけを取り上げている、ただ産業経済等の専門的な情報の伝達を行っているのであるから、これらの情報の性質上、表現方法には自ずと限界があり、同じ事実を報道すれば結果的に表現が共通してくる部分が多くなることは避けられない旨主張する。
 成立に争いのない甲第二九号証及び弁論の全趣旨によれば、事実を報道する新聞記事の作成の経過は、報道すべき主題を発見し、それに対応する取材源を探知して、そこから記事の内容となる素材を収集した上で、収集した素材の中から記事に盛り込む事実を選択し、一定の構成に配列し、組み立てて、適切な文体、修辞で表現するというものであると認められる。
 ところで、右のような報道すべき主題の発見、取材源の探知、素材の収集は著作権による保護の対象ではないから、それがいかに苦心して発見、探知、収集されたものであっても、既に報道された新聞記事によってその記事が主題とした事項や取材源を知り、その取材源から同様の素材を収集し、その結果、元の記事と同様の事実を含む記事が作成されたとしても、元の記事の著作権を侵害するものとはいえない。
 しかし、被告文章が原告記事に依拠した以外に、どのような取材源から取材したのかについては、弁論の全趣旨によって真正に成立したものと認められる乙第一三号証、乙第二二号証によれば、被告においては一般に各種日刊新聞、各通信社から入電するニュース、企業の発表するプレス・リリース、プレス・リリース発行社への資料請求、会社への電話取材等に基づいて記事を作成していたが、情報源が一つの場合もあったことが認められるのみで、具体的に、被告文章について原告記事以外に情報源があったものとは認めるに足りる証拠はない。被告は、被告文章中の「Contact」欄に電話番号又はファックス番号の記載のあるものは被告の記者が会社に確認した場合に記載したものである旨主張するが、これにそう証拠はない。むしろ、被告文章は原告記事に依拠したものと認められることは四12に認定したとおりである。
 被告の主張は採用できない。
2 被告は、客観的な事実が同じである以上、被告文章が原告記事と似たような表現になることはやむを得ないとも主張する。
 しかしながら客観的な事実を素材とする新聞記事であっても、収集した素材の中からの記事に盛り込む事項の選択と、その配列、組み立て、その文章表現の技法は多様な選択、構成、表現が可能であり、新聞記事の著作者は、収集した素材の中から、一定の観点と判断基準に基づいて、記事の盛り込む事項を選択し、構成、表現するのであり、著作物といいうる程の内容を含む記事であれば直接の文章表現上は客観的報道であっても、選択された素材の内容、量、構成等により、少なくともその記事の主題についての、著作者の賞賛、好意、批判、断罪、情報価値等に対する評価等の思想、感情が表現されているものというべきである。
 そのような記事の主要な部分を含み、その記事の表現している思想、感情と主要な部分において同一の思想、感情を表現している要約は、元の記事の翻案に当たるものである。

B.客観的な事実やデータの非著作物性 ・・・ 客観的な事実やデータという情報の公共性
 
C.新しい著作物の創造のための基盤としての公共的情報財

・客観的な事実やデータ
・先行の著作物の中の「アイデア」
・古典的著作物の中の「表現」 —- ex.シェイクスピアの著作
 
[今回の授業の関連資料]
3.文化庁「地震のデータは著作物ですか。地震のデータをまとめて表にしたものはどうですか。」『著作権なるほど質問箱』
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