表示装置に関するイノベーション

1.「画素数」視点から見た製品イノベーション

技術的性能としては、画素数が大きいほうが性能がより高い。

ex.1 ケータイ
ケータイ内蔵のカメラは、「30万画素のカメラ」から「200万画素のカメラ」、「500万画素のカメラ」、「1000万画素のカメラ」というように技術進歩している。

ex.2 映像メディア
映画などの録画媒体としては、「約30万画素のVHSテープ、8ミリビデオ、DVD」から、「約200万画素のブルーレイディスク」というように技術進歩している。

ex.3 テレビ受像機
テレビは、「約30万画素の旧型テレビ」から、「約100万画素のハイビジョンテレビ」、そして現在主流の「約200万画素のフルハイビジョンテレビ」というように技術進歩している。最近は「約800万画素の4Kテレビ」が次世代テレビとして話題になっている。

名称 総画素数
標準画質テレビ
(SD:Standard Definition)
640ドット 480ドット 約30万画素
ハイビジョンテレビ
(HD:High Definition)
1,366ドット 768ドット 約100万画素
フルハイビジョンテレビ
(Full HD)
1,920ドット 1,080ドット 約200万画素
ex.4 テレビ放送
テレビ放送は、「約30万画素の地上波アナログ放送」から、「約150万画素の地上波デジタル放送」、そして現在主流の「約200万画素のフルハイビジョンテレビ」というように技術進歩している。最近は「約800万画素の4Kテレビ」が次世代テレビ受像機として話題になっているが、そうした「ハードウェアとしてのTV」に関する技術革新に対応して、NHK放送技術研究所では4K放送や8K放送の研究が進んでいる。

名称 総画素数
地上波アナログ放送 640ドット 480ドット 約30万画素
地上波デジタル放送 1,440ドット 1,080ドット 約150万画素
フルハイビジョン放送
(2K放送)
1,920ドット 1,080ドット 約200万画素
4K放送 3,840ドット 2,160ドット 約800万画素
8K放送 7,680ドット 4,320ドット 約3,200万画素

NHK放送技術研究所「スーパーハイビジョンの方式」研究内容紹介>次世代放送メディア
www.nhk.or.jp/strl/vision1/r1-1-1.htm

2.「色数」視点から見た製品イノベーション

24ビット=1677万色表示の意味
光の三原色R,G,Bそれぞれの色に関する明るさを256段階で指定する方式が一般的 — R,G,Bそれぞれに1byte(8bits)の情報量
PSPとDSの「カタログ性能」と「実感性能(実性能)」の違い

プログラム上は指定できるが、実際にユーザーがそれをきちんと認識できるかどうかは、ユーザーの識別能力およびディスプレイの性能によって規定されている。
 なお下記で示したように赤の明るさを「プログラム」上で256段階で指定することはできるが、ディスプレイの性能やユーザーの識別能力との関係では下記の図1で示したように隣の色とかなり明るさが違うものであればなんとか認識できるが、図2のように256段階の明るさの変化の識別はディスプレイ性能や人間の識別能力の問題のためほとんど識別困難である。
なお#1F000(27,0,0)は黒色[#00000(0,0,0)]に見えるかもしれないが、拡大した色見本の図3に示したように実際には異なっている。

色見本 図1
左から順にR,G,Bが#FF0000(255,0,0)、#DF000(223,0,0)、#BF000(191,0,0)、#9F000(159,0,0)、#7F000(123,0,0)、#5F000(91,0,0)、#3F000(59,0,0)、#1F000(27,0,0)というように順に暗い赤色が指定してある。
色見本 図2
色指定 色見本 色指定 色見本
R255,G0,B0 #FF0000 R239,G0,B0 #EF0000
R254,G0,B0 #FE0000 R238,G0,B0 #EE0000
R253,G0,B0 #FD0000 R237,G0,B0 #ED0000
R252,G0,B0 #FC0000 R236,G0,B0 #EC0000
R251,G0,B0 #FB0000 R235,G0,B0 #EB0000
R250,G0,B0 #FA0000 R234,G0,B0 #EA0000
R249,G0,B0 #F90000 R233,G0,B0 #E90000
R248,G0,B0 #F80000 R232,G0,B0 #E80000
R247,G0,B0 #F70000 R231,G0,B0 #E70000
R246,G0,B0 #F60000 R230,G0,B0 #E60000
R245,G0,B0 #F50000 R229,G0,B0 #E50000
R244,G0,B0 #F40000 R228,G0,B0 #E40000
R243,G0,B0 #F30000 R227,G0,B0 #E30000
R242,G0,B0 #F20000 R226,G0,B0 #E20000
R241,G0,B0 #F10000 R225,G0,B0 #E10000
R240,G0,B0 #F00000 R224,G0,B0 #E00000
色見本 図3
左から順にR,G,Bが#1F000(27,0,0)、#1F000(00,0,0)と指定してある。
3.「情報の非対称性」問題

「情報の非対称性」を利用する企業

「情報の非対称性」を解消することでイノベーションの普及に成功した企業

「情報の非対称性」に悩む企業
「情報の非対称性」にうまく対応できなかったため、イノベーションの普及に失敗した企業

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NHKと技術革新

NHK「NHKが行う技術開発の役割や成果はどういかされているのか」NHKWEB>質問集トップ >NHKについて>組織・理念・経営
http://www.nhk.or.jp/faq-corner/1nhk/01/01-01-17.html

「NHKは、1989年に世界で初めて実現した衛星放送、広く世界に普及したハイビジョン放送、2016年に試験放送を開始した8Kスーパーハイビジョンなど、短期的な利益にとらわれずに将来の放送の姿を見据えて新しい技術を探求してきました。そうした取り組みの成果を視聴者の皆さまに還元し、安全・安心・豊かな社会の実現に貢献していくことも、公共放送であるNHKの大切な役割と考えています。 」

NHK「NHKの放送技術の役割」
https://www.nhk.or.jp/digital/b_tech/pdf2017/nhk2017_10_15.pdf

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市場形成初期におけるProduct designの多様性

機械式タイプライター市場形成初期におけるキーボード配列に関するProduct designの多様性に関する技術的視点からの考察
 
機械式タイプライター用キーボード配列に関わる技術的制約要因
1.入力文字種
(1) アルファベット文字はA-Zで26文字ある
(2)アルファベット文字には、小文字と大文字がある
2.人間の指は、左手5本、右手5本である
 
機械式タイプライター用キーボード配列に求められるneeds
1.「より早く打てる方が良い」(入力速度は高い方が良い)
「右手と左手で交互にリズミカルに打てる方が良い」「出現頻度が高い文字を打ちやすい方が良い」.

0

2.「疲れにくい配列が良い」
3.「覚えやすい配列が良い」
→「打ちやすい配列が良い」

 
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放送法の2010年12月3日付けの改正

1.放送法の2010年12月3日付けの改正内容 — 放送の定義を「無線通信の送信」から「電気通信への送信」に変更
 
附則
第二条第一項第一号中「無線通信の送信」を「電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)」に改める。
 
関連記事>
 
2. 2010年12月3日付けの放送法改正の意味
2010年改正以前の放送法においても、テレビ放送を見ることができるパソコン、ワンセグ放送を見ることができる携帯電話を持っている場合にも、NHKの放送受信料を支払う必要があった。これは放送法32条の規定で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とされていることが法的根拠となっている。
したがって仮にテレビを持っていなくてもワンセグ放送を受信できる携帯電話をもっていれば、ワンセグでNHKのテレビ放送をまったく見ていないとしても受信料を支払う義務が法的には存在している。

 2010年改正の放送法は、放送の定義を「無線通信の送信」から「電気通信への送信」に変更したことによってYouTubeやGyaoなどでなされているようにインターネットを利用した番組送信をNHKが公衆(不特定又は多数の者)に対しておこなう場合には、NHKはインターネットを利用して放送をおこなっている、と解釈すべきように思われる。

ただしNHKは、NHKビデオオンデマンドhttps://www.nhk-ondemand.jp/においておこなっているインターネットを利用したテレビ番組の配信サービスは、「放送」ではなく「通信」である、としている。( ) このようにNHKオンデマンドは「放送」ではなく「通信」であるから、受信契約の義務は現在のところ法的には存在していない。
しかしながらNHKがインターネットを利用して公衆(不特定又は多数の者)に対して番組の送信を開始した瞬間に、ネットに接続されたPCに対して放送を開始したことになり、ネットに接続可能なPCにはNHKの受信契約の義務が法的に発生することになると考えられる。

ここでの放送と通信の区別に関する基本的論点は、放送は公衆に対するものであるということにある。すなわち、放送は公衆によって直接受信されるものであるのに対して、NHKオンデマンドはそれを求めている特定の者に限定した受信であるから、NHKオンデマンドは「放送」ではない、とされている。( )
 
 しかし「番組送信の対象が公衆(不特定又は多数の者)か否か」という基準は単純ではない。そのことは、まねきTVに関する2011年1月18日の最高裁判決に示されている。というのは、同判決では、番組送信の主体であるまねきTVから見ると、「サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たる」のであるから、「公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである」とされているからである。すなわち最高裁判決は、まねきTVが利用しているソニーの「ロケーションフリー」機器の個々のマシンは、あらかじめ決められた特定の端末との1対1の送受信をおこなうものであり、不特定の者や多数への送信をおこなうものではないけれども( )、まねきTVは不特定多数のユーザーと契約を結び、番組送信サービスを提供しているのであるから、まねきTVという番組送信主体からみてユーザーは不特定の者として「公衆」に当たる、という論理構成を取っている。
 こうした論理構成を認めるとすれば、NHKオンデマンドは個々の番組送信行為は1対1の送受信であり特定の者への送信であり、不特定の者や多数への送信をおこなうものではないけれども、NHKオンデマントは不特定多数のユーザーと契約を結び、番組送信サービスを提供しているのであるから、NHKという番組送信主体からみてユーザーは不特定の者として「公衆」に当たることになる。それゆえ、最高裁判決の論理構成に従えば、NHKオンデマンドはテレビ番組の公衆送信、すなわち、放送に該当すると論理的に帰結せざるを得ない、と思われる。
 しかしこうした解釈は、衆議院総務委員会での審議に見られる明示的な合意と矛盾しているように思われる。

 

関連記事>NHK(2011)「NHK受信料の窓口-よくいただく質問 – パソコンや携帯電話でテレビ(ワンセグを含む)を見る場合も、受信料を支払うの?」
http://pid.nhk.or.jp/jushinryo/know/qa.html#q6

NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付き携帯電話についても、放送法第32条によって規定されている「協会の放送を受信することのできる受信設備」ですので、受信契約の対象となり、受信料のお支払いが必要です。NHKのワンセグが受信できる機器についても同様です。
ただし、受信契約は世帯単位となりますので、一般の家庭でテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付き携帯電話を含めて、複数台のテレビを所有している場合に必要な受信契約は1件となります。
一方、事業所の場合は、従来どおり設置場所ごとの受信契約が必要となります。
 

関連記事>hylom(2010)「放送法改正でPCは放送受信機になるか?」2010年03月24日 17時33分掲載
http://slashdot.jp/article.pl?sid=10/03/24/0728256

(放送法改正にともなう放送に関する新しい)この定義によると、もしNHKがインターネット上に番組をOn Demandなりなんなりで送信することは今度からは「放送」であると定義することも可能のように見える。しかし、そうするとPCも新放送法第64条(旧32条)に規定される「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当するようにも見える。「PCを持っているのならば、受信料を払う必要があります」となることも考えられる。
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放送法の規定とNHK - 放送と通信の法的差異

放送法における法的規定とその解釈
 
(1) 放送法の条文の一部抜粋
(昭和二十五年五月二日法律第百三十二号)      最終改正:平成二二年一二月三日法律第六五号
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、左に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一  放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二  放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

(定義)
第二条  この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
一  「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。

第二章 日本放送協会
第一節 通則
(目的)
第七条  協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行い又は当該放送番組を委託して放送させるとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び委託協会国際放送業務を行うことを目的とする。

第六節 受信料等
(受信契約及び受信料)
第三十二条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2  協会は、あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3  協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。

(2) 放送法 第32条の規定の解釈
放送法の第32条の規定におけるNHKのテレビ放送を受信できる設備の中には、携帯電話などのワンセグ装置も含まれる。したがって自宅にテレビを持っていなくてもワンセグをもっていれば、NHKと受信契約し、受信料を支払わなければならない法的義務がある。また自宅にテレビを持っていなくてもテレビ放送を見れるカーナビをもっていれば、NHKと受信契約し、受信料を支払わなければならない法的義務がある。
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民間営利企業による放送サービスの公共経済学的位置づけ

WOWOWもスカパーも、会員拡大を目的として加入月の視聴料を0円とし、加入した翌月から月額視聴料を徴収するようにしている。またその月額視聴料は固定料金制で、見放題となっている。(月額視聴料はWOWOWが3chで2,300円、スカパーが48chで3,400円)

http://www.wowow.co.jp/join/index.html
https://promo.skyperfectv.co.jp/guide/ad/index.html

また2018年1月には全世界での加入者数が1.2憶人の動画配信サイトNetflixも、会員拡大を目的としてサービス加入日から1カ月間(30日間)は無料で、その後で視聴料を徴収するようにしている。またその月額視聴料は固定料金制で、見放題となっている。(月額視聴料 SD画質のベーシックプランで650円、HD画質のスターンダードプランで950円、4K画質のプレミアムプランで1,450円となっている。)

https://www.netflix.com/signup/planform

問1 WOWOW、スカパーなどの放送局や、Netflixなどの動画サイトなど、固定料金制で見放題で提供しているサービスは、公共経済学的にはprivate goods, public goods, club goods, common goodsのどれに該当するのかを理由を挙げて説明しなさい。
 
問2 WOWOW、スカパーなどの放送局や、Netflixなどの動画サイトが一定期間の視聴料を無料とするだけでなく、月額視聴料を固定料金制で見放題と経営的にできる理由をそのコスト構造から説明しなさい。
 
 
 
米Netflixが1月22日(現地時間)に発表した2017年第4四半期(10~12月)の決算は、売上高は36%増の32億9000万ドル(約3650億円)、純利益は3倍近い1億8600万ドル(1株当たり43セント)だった。
 同四半期に契約者数が833万人増え、1億1760万人になった。契約者数の増加は市場予想を大きく上回った。米国外での新規契約者数は636万人で、四半期としては過去最高だった。
 
問3 売上高が36%増であるにも関わらず、純利益が3倍になるメカニズムを、5/9の授業内容をもとに推測しなさい。
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カーナビとTV放送受信機能 - 放送受信設備の定義

会計検査院トップ> 年度選択> 平成22年度決算検査報告> 業務用の車両に設置するカーナビについて、テレビ受信機能の必要性を十分検討して経済的な購入を行うこととするとともに、購入済みのカーナビに係る日本放送協会との受信契約を業務上の必要性に応じて適切に見直すよう改善させたもの

ttp://report.jbaudit.go.jp/org/h22/2010-h22-0424-0.htm

 カーナビには、付加機能としてテレビ受信機能を有するものと有しないものとがあり、基本的な性能が同じ機種で比較すると、一般的にテレビ受信機能を有するものの方が高価であり、小売価格で5割程度高いものもある。

(2) テレビ受信機能を有するカーナビに係る受信契約の概要
 放送法(昭和25年法律第132号)及び日本放送協会放送受信規約によれば、日本放送協会(以下「協会」という。)の放送を受信することのできる受信設備(以下「受信機」という。)を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)をしなければならないとされており、法人等がその事業所等に受信機を設置する場合には、当該事業所等の部屋、自動車等、受信機の設置場所ごとにそれぞれ受信契約を締結することとされている。
 そして、放送法に規定される受信機には、テレビ受信機能を有するカーナビも含まれることとされている。

(検査の結果)
 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 検査対象としたカーナビ1,339台のうち、本省及び46農政局等が購入した1,217台、購入額計1億2189万余円(車体に組み込まれており単体での購入額が不明な24台分の購入額は含まない。)は、テレビ受信機能を有していた。
 しかし、上記の1,217台を対象として、当該カーナビを使用してテレビを視聴する必要性について、使用実態を実地に確認したり本省を通じて聴取したりして検査したところ、46農政局等が購入した1,216台、購入額計1億2182万余円(車体に組み込まれており単体での購入額が不明な24台分の購入額は含まない。)については、業務上テレビを視聴する必要がないとしていた。なお、残りの1台については、本省が保有する車両に設置されていて、国会業務に係る情報把握等のためにテレビを視聴する必要があるとしていた。
 また、上記の1,216台について、21、22両年度の受信料の支払状況を検査したところ、26農政局等(注3 )は、21年度に162台、22年度に570台のカーナビについて、受信契約に基づき、それぞれ121万余円、425万余円、計547万余円の受信料を支払っていた。なお、17農政局等(注4 )の368台については、既に各農政局等において購入後に業務上テレビを視聴する必要はないと判断し、協会に照会するなどした上でテレビ受信機能を無効にする措置を執ったことにより、受信契約が不要となり、受信料を支払う必要がない状況になっていた
 したがって、上記のように、車両に設置するカーナビについて、業務上テレビを視聴する必要がないのにより高価なテレビ受信機能を有するものを購入していたり、購入済みのカーナビについて、受信契約の見直しを適切に行わずに受信料を支払ったりしていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

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日本科学史学会シンポジウム>歴史教育における科学史・技術史の教育的意義斎藤憲会長 挨拶

[関連WEBページ]
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日本科学史学会シンポジウム>歴史教育における科学史・技術史の教育的意義
木本忠昭「高校の歴史教育において技術史をどのように取り扱うべきなのか:技術史から見たいくつかの論点」

 
1.はじめに
2022年度に施工が予定されている次期の高校学習指導要領では、「歴史総合」が「地理総合」と並んで必修科目となる。「歴史総合」という科目は、「世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目」であり、「歴史の大きな転換に着目し,単元の基軸となる本質的で大きな問いを設け、諸資料を適切に活用しながら,比較や因果関係を追究するなど社会的事象の歴史的な見方・考え方を用いて考察する歴史の学び方を身に付ける」ことを目標としている
本報告では、いくつかの高校の「世界史」の現行の教科書において、どのような技術史的事項がどのように取り上げられているのかを分析することを通じて、技術の歴史が現にどのように描かれているのかを検討するとともに、技術の歴史がどのように取り扱われるのがより適切なのかを考えてみたい。

 

前提作業として、次の2点を基本的視点として確認しておく。

 

 第1の基本的視点は、「世界」史と技術史の関係についてである。そもそも、「世界」史(歴史)の構成分野には、政治史、社会・生活史、産業史、文化・芸術史等々の個別分野があり、技術史も本来はその一つである。しかし、実際の「書かれた」世界史(歴史)書には、技術史(的内容)は、殆どないか、断片的付け足しでしかない。世界史(歴史)に技術史は必要なのか、不要なのかということであり、必要ならば何故かを明確にしておかなければならない。

 

 第2の基本的視点は、歴史の流れを総合的に捉え近現代社会をよりよく理解し、将来を考える力を育成するという高校の歴史教育への社会的要請に応えるためには、技術の歴史における何をどのように取り上げるべきなのかを、歴史「通史」と技術史の連環から考えるということである。あえて換言的に言えば、技術史のための技術史でも、「歴史通史」でもないということである。

 

さて、学習指導要領から要請されている立脚点-近現代社会を理解し、将来を考える枠組としての手掛かりとしては、近現代社会における科学および技術の社会変化・社会影響の増大化を無視することができないことについては、おおかたの同意をえられるのではなかろうか。しかし、「技術一般」が、社会変化を起こした(影響した)わけではなく、社会変化の要因となったのは、個々の技術であり、それらの技術の歴史的な連鎖は逆に社会的諸関係の中で推し進められてきたのである。単なる技術史的「史実追求史」ではなく、「社会は技術(技術変化)によってどのように成り立ち、また変化してきたのか?逆に、技術は社会諸関係によってどの様なものになってきたのか、また現になっているのか?そして、そのような技術によって社会と人間はどの様な事態に直面しているのか?」を考えるためには、どのような史実が提示されるべきであろうか。

 
2. 現行教科書の技術史的内容と問題点
現行教科書で技術史的事項がどのように取り上げられているか、 いくつかの教科書をみてみたい。
 
3. おわりに
 

How Should We Teach History of Technology in High School Historical Education? – Some points from the viewpoint of History of Technology
Tadaaki KIMOTO
 
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日本科学史学会シンポジウム>歴史教育における科学史・技術史の教育的意義
山田俊弘「どのように高校の歴史用語を選ぶのか:科学史のヒストリオグラフィーの問題」

東京大学教育学研究科研究員 山田俊弘
 
20世紀の初頭、科学史家のサートンが「新ヒューマニズム」を唱えて科学の歴史の研究と普及の活動を開始したとき、科学史は「科学」と「歴史」の二重のディシプリンを持つとするとともに、それを教育の問題として捉えていた(Sarton 1921)。彼は科学史をカリキュラムに導入することによる教育の制度(システム)と教育的な価値の変革を訴えた。今日、科学史は改めてその二重の性格を考慮することから、歴史教育と科学教育にどのような役割を果たせるのか。特に今回の場合、高校の歴史教育で科学史を扱うことの意義と問題点は何なのか、そこから翻って従来主張されてきた科学教育での役割も見直せないか考えたい。
 佐野報告にあるように、高大連携歴史教育研究会は、高校での歴史教育で使われる用語を全面的に点検し、今日的な標準を教科書記述や入試問題作成の際のガイドラインとして提示しようとしている。歴史の方法論や基本概念となる用語を教育的に吟味し直し、単に絞り込むだけでなく、ジェンダーや産物、環境史、自然災害などに関する用語を採用するという方針は理解できるし有意義だろう。しかしその目的を、教科書をスリムにすることを通して「歴史的思考力の育成を可能にする」としている点は、本末転倒のような気がしてならない。
 というのは、学校の歴史は暗記物だと人々に思わせてしまうのは、〈歴史を語る〉ということの意味を考えさせることができていない点に問題があるので、用語の過多を難じて一律に「精選」に走ることは、かえってこれだけは最低限「暗記」せよといった強制を暗示することになりかねない。科学史記述との関係でいえば、たとえば「科学革命」は「世界史」や、「倫理」でも扱われる重要な項目である。その内実は、コペルニクスから、ケプラー、ガリレオを経てニュートンに至る近代科学の形成過程と理解すれば、このうちガリレオを削る選択はしにくい。もちろん、「科学革命」の定義をめぐって10人の科学史家が15通りの答えを返すという状況があり(プリンチペ 2014)、「17(・・)世紀(・・)科学革命」と解してコペルニクスの名をカットすることは考えうるとしても、「科学革命」概念の理解という観点からはむしろ有害というしかない。科学史家がその道の「歴史」の専門家として関与する余地は十分あろう。
 科学史が、歴史研究の一分野として制度化される一方で、科学者が後継者育成の場で語るストーリーがある。これを金森修は「嚮導科学史」と呼んで科学思想史と対比させたが、両者合わせて広い意味での科学教育論への連接を示唆したとも解釈できる(山田 2017)。科学教育の場では「ケプラーの法則」のようなエポニミー現象が人名の関わる用語として登場する。こうした用語は、科学的思考力の育成には関わりないという立場もあるが、科学の文化的現象には違いない。サートンの顰に倣っていえば、自身の二重の出自を自覚することで、科学史は歴史教育と科学教育の双方に関係しており、また関与することで新しい文化を生み出すべきだろう。
 
【文献】
プリンチペ, L., 科学革命 (丸善, 2014); Sarton, G., Isis, 4-2, 1921, 225-249; 山田俊弘, 東京大学大学院教育学研究科基礎教育学研究室紀要, 43, 2017, 59-61.
 

How to Select Historical Terms for High School Students: Historiographical Issues in the History of Science
Research Fellow, University of Tokyo Toshihiro YAMADA
 
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日本科学史学会シンポジウム>歴史教育における科学史・技術史の教育的意義
佐野正博「歴史学の一領域としての科学史・技術史の教育的意義」

1.歴史学の一分野としての科学史・技術史の位置づけ ー 総合科学史・総合技術史との関連における「歴史における科学・技術」
 
2.高校の現行歴史教科書における科学史・技術史の取り扱いの現状と問題点
 
3.次期の高校学習指導要領における新必修科目「歴史総合」など歴史系科目の目標
次期の高校学習指導要領(2018年3月告示、2022年度施工予定)では、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を取り扱う「歴史総合」(2単位)が必修科目とされ、「世界史探究」と「日本史探究」(各3単位)が選択科目とされている。
それらの歴史科目の共通目標は、「諸事象等の意味や意義,特色や相互の関連について,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現代とのつながりなどに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う」ことである。
なお「歴史総合」という新必修科目が構想されたのは、「グローバル化が進む今日、高校の歴史教育に求められるのは、「世界史」か「日本史」かの二者択一ではなく、グローバルな視野の中で現代世界とその中における日本の過去と現在、そして未来を主体的・総合的に考えることを可能にする歴史教育である。」[日本学術会議(2016) p.ii, p.1]という認識に基づくものである。
 
[関連参考資料]
1)文部科学省中央教育審議会(2016)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」2016年12月21日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf
「各教科等において習得する知識や技能であるが、個別の事実的な知識のみを指すものではなく、それらが相互に関連付けられ、さらに社会の中で生きて働く知識となるものを含むものである。
 例えば、“何年にこうした出来事が起きた”という歴史上の事実的な知識は、“その出来事はなぜ起こったのか”や“その出来事がどのような影響を及ぼしたのか”を追究する学習の過程を通じて、当時の社会や現代に持つ意味などを含め、知識相互がつながり関連付けられながら習得されていく。それは、各教科等の本質を深く理解するために不可欠となる主要な概念の習得につながるものである。そして、そうした概念が、現代の社会生活にどう関わってくるかを考えていけるようにするための指導も重要である。基礎的・基本的な知識を着実に習得しながら、既存の知識と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、学習内容(特に主要な概念に関するもの)の深い理解と、個別の知識の定着を図るとともに、社会における様々な場面で活用できる概念としていくことが重要となる。」pp.28-29
「共通必履修科目である「歴史総合」については、(1)②で示した資質・能力を踏まえつつ、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて、近現代の歴史を理解する科目・ 歴史の推移や変化を踏まえ、課題の解決を視野に入れて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目・ 歴史の大きな転換に着目し、単元の基軸となる問いを設け、資料を活用しながら、歴史の学び方(「類似・差異」、「因果関係」に着目する等)を習得する科目とすることが適当である。(別添3-8、別添3-9を参照)」p.134

2) 文部科学省中央教育審議会(2016)上記答申の別添資料3「社会、地理歴史、公民」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_3_1.pdf
  別添3-4 社会科,地理歴史科,公民科における「社会的な見方・考え方」のイメージp.13/28
「社会的事象の歴史的な見方・考え方」とは「社会的事象を時期,推移などに着目して捉え類似や差異などを明確にしたり事象同士を因果関係などで関連付けたり」することであり、「社会的事象の地理的な見方・考え方」は「社会的事象を位置や空間的な広がりに着目して捉え地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付け」ることである、とされている。

[関連参考資料1]
1)文部科学省中央教育審議会(2016)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」2016年12月21日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf
「各教科等において習得する知識や技能であるが、個別の事実的な知識のみを指すものではなく、それらが相互に関連付けられ、さらに社会の中で生きて働く知識となるものを含むものである。
 例えば、“何年にこうした出来事が起きた”という歴史上の事実的な知識は、“その出来事はなぜ起こったのか”や“その出来事がどのような影響を及ぼしたのか”を追究する学習の過程を通じて、当時の社会や現代に持つ意味などを含め、知識相互がつながり関連付けられながら習得されていく。それは、各教科等の本質を深く理解するために不可欠となる主要な概念の習得につながるものである。そして、そうした概念が、現代の社会生活にどう関わってくるかを考えていけるようにするための指導も重要である。基礎的・基本的な知識を着実に習得しながら、既存の知識と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、学習内容(特に主要な概念に関するもの)の深い理解と、個別の知識の定着を図るとともに、社会における様々な場面で活用できる概念としていくことが重要となる。」pp.28-29
「共通必履修科目である「歴史総合」については、(1)②で示した資質・能力を踏まえつつ、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて、近現代の歴史を理解する科目・ 歴史の推移や変化を踏まえ、課題の解決を視野に入れて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目・ 歴史の大きな転換に着目し、単元の基軸となる問いを設け、資料を活用しながら、歴史の学び方(「類似・差異」、「因果関係」に着目する等)を習得する科目とすることが適当である。(別添3-8、別添3-9を参照)」p.134
 
2) 文部科学省中央教育審議会(2016)上記答申の別添資料3「社会、地理歴史、公民」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_3_1.pdf
  別添3-4 社会科,地理歴史科,公民科における「社会的な見方・考え方」のイメージp.13/28
「社会的事象の歴史的な見方・考え方」とは「社会的事象を時期,推移などに着目して捉え類似や差異などを明確にしたり事象同士を因果関係などで関連付けたり」することであり、「社会的事象の地理的な見方・考え方」は「社会的事象を位置や空間的な広がりに着目して捉え地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付け」ることである、とされている。
 
3) 文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室(2017)「今後の学習指導要領改訂に関するスケージュール」2017年5月12日
 
[関連参考資料2]
  1. NHKラジオ2017年12月5日(火)放送「高校日本史から信玄や龍馬が消える?」2018年2月5日(月) 午後8:00配信終了
    NHKラジオ「過去の「特集」を聞く」WEBページ(http://www4.nhk.or.jp/hitokoto/363/)の中ほどにリンクがあります、
    油井大三郎(東京大学 名誉教授、高大連携歴史教育研究会 会長)先生が出演され、今回の用語精選案の狙い・意図を約22分にわたって解説されています。

  2. 吉川慧(2016)「「脱ゆとり」明確化、高校では「歴史総合」を新設 指導要領改定で困惑の声も」HuffPost News、2016年8月1日
    http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/01/gakusyu-sidou-youryou-kaihen_n_11292196.html
     指導要領の改訂の基本は「脱ゆとり」とされている。

  3. 原田智仁(2017)「次期学習指導要領の動向:歴史総合の可能性」『世界史のしおり』(帝国書院)2017年度1学期号、pp.8-9
    http://www.teikokushoin.co.jp/journals/history_world/pdf/201701g/06_hswhbl_2017_01g_p08_p09.pdf

  4. 梅津正美(2017)「次期学習指導要領の動向:「歴史総合」 の実践課題」『世界史のしおり』(帝国書院)2017年度2学期号、pp.8-9
    http://www.teikokushoin.co.jp/journals/history_world/pdf/201702g/05_hswhbl_2017_02g_p08_p09.pdf
    テーマの一例として、「技術革新と経営革新:アメリカ・フォードはなぜ成功したのか」が挙げられている。

  5. 日本学術会議 史学委員会 高校歴史教育に関する分科会(2016)「提言:『歴史総合』に期待されるもの」
    http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t228-2.pdf
 
4.高大連携歴史教育研究会による歴史系用語精選提案のポイントと問題点
  1. 用語の取捨選択について、概念を重視しながら用語を精選するという方針で、科学者についてもできるだけ削減する方針でとりまとめられている。
  2. ただし、教科書で説明する際に個人の名前を入れないと説明が難しいという科学者については、用語として残されている。
    そのような観点からコペルニクスは残ったが、ガリレオやケプラーは人名用語として取り上げない。
  3. 従来の教科書に比べ、20世紀以降について拡充していることも特徴である。20世紀の科学者がアインシュタインまでで終わるのではなく、その後についても取り上げられている。
 
5.科学・技術の歴史に関する「学」的記述 vs 「高校教科書」的記述
「高校教科書」的記述としての「人類の過去を知ることなくして現在ならびに未来の諸問題に責任をもって対処することはできない。」[日本学術会議(2016) p.5]という文言をもじって言えば、「科学・技術の過去を知ることなくして、科学・技術の現在ならびに未来の諸問題に責任をもって対処することはできない。」ということになろう。
 
 
関連参考資料
  1. 「歴史総合」関連参考資料
  2.  
  3. 「高大連携歴史教育研究会」関連参考資料
  4.  
  5. 「文部科学省高校学習指導要領改訂」関連参考資料
  6. 現行学習指導要領
  7.  
  8. 関連参考資料メモ>
  9.  
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<2018年度日本科学史学会シンポジウム>
歴史教育における科学史・技術史の教育的意義 開催趣旨

高大連携歴史教育研究会は、「細かい用語の暗記力を問う大学入試の影響で、高校の歴史教育が膨大な数の用語の説明・暗記に追われ、思考力を育成し歴史を学ぶ楽しさを実感させられる授業が行えない」という問題意識のもと、「ガリレオや坂本龍馬など、歴史を大きく動かしたわけではない人名などを削除すべき」などとする「歴史系用語精選の提案」(第一次)を2017年10月に発表した。
同提案に対しては、歴史的思考力の育成というその基本的目標には異論がないものの、その手段として用語数を半減させる(現行の世界史・日本史の教科書の各3400-3800語という用語数を世界史1835語、日本史1856語に絞り込む)ことに対して様々な疑問・懸念や反論が投げかけられた。
科学史・技術史の分野においても「ガリレオが高校の歴史教科書から消える」ということに対する疑問をはじめとして、同提案のままでは高校生における科学史・技術史に関わる知識や興味関心がこれまで以上に低下するのではないかという危惧・懸念が表明されている。
またその一方で、歴史的思考力の育成という視点から高校段階における科学史・技術史のより適切な体系化を図ること、すなわち、高校段階で科学や技術の歴史における何をどのように教えることがより適切なのかを明確化することの必要性も指摘されている。
高大連携歴史教育研究会の同提案に対して、科学史・技術史の分野から一定の問題提起をし、対案の作成を試みることは、科学史・技術史の教育的意義の新しい一面を明らかにすることでもある。
これまで高校教育の段階における科学史・技術史の教育的意義は科学教育・理科教育との関連で論じられることが主であった。例えば科学的知識の歴史的形成プロセスを理解することは、科学的精神・科学的自然観(科学的なものの見方・考え方)の涵養や、物理・化学・生物・地学などの内容的理解に資するといったことが現在でも広く共通了解になっている。
 しかし科学史・技術史も政治史や美術史などと同じく歴史学の一領域(分野)として位置づけることができるとすれば、歴史教育との関連において科学史・技術史の意義を論じること、すなわち、「歴史教育の視点から見て、科学や技術の歴史における何をどのように取り上げることが有用かつ適切であるのか?」を明確にすることも必要かつ重要である。
 本シンポジウムは、兵藤友博会員の司会のもと、最初に斎藤憲会長から開催趣旨説明を含む10分程度の挨拶を頂き、その後、各パネリストからの15-20分程度の報告の後、フロアから意見・質問を広く受け付ける。
 
 
関連参考資料メモ>
 
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<2018年度日本科学史学会シンポジウム>
歴史教育における科学史・技術史の教育的意義 プログラム

日時:2018年5月26日(土) 14:10-16:40
場所:東京理科大学葛飾キャンパス講義棟 5F(東京都葛飾区新宿6-3-1)
交通:JR常磐線「金町」駅/京成金町線「京成金町」駅下車、徒歩8分。
 
シンポジウム・プログラム
下記の報告タイトル欄をクリックすると、各報告者の報告内容の詳細を見ることができます。
 
司会 兵藤友博
14:10-14:20 斎藤憲「はじめに:本シンポジウム開催にあたって」
14:20-14:35 佐野正博「歴史学の一領域としての科学史・技術史の教育的意義」
14:35-14:55 山田俊弘「どのように高校の歴史用語を選ぶのか:科学史のヒストリオグラフィーの問題」
14:55-15:15 木本忠昭「高校の歴史教育において技術史をどのように取り扱うべきなのか:技術史から見たいくつかの論点」
15:15-15:30 休憩(フロアからの質問・意見の集約ほか)
15:30-16:40 全体討論
 
 
関連参考資料メモ>
 
 
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2018.04.23 経営技術特論A

当日配布資料
 
競争優位(Competitive Advantage)の持続性 – 模倣困難性(difficulty in imitation)
Porter, Michael E. (1985). Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press[ポーター, M.E. (土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社]
Barney, J.(1996,2001,2006,2010) Gaining and Sustaining Competitive Advantage,Prentice Hall
 
Porter の3つの戦略(generic strategies — Cost Leadership, Differentiation, Focus)
1. Cost Leadership(コストリーダーシップ)戦略
2.Differentiation(差異化)戦略
3.Focus(集中)戦略
 

 
[考察してみよう]日本企業の「同質化」戦略に対して、どのような意味付けを与えることが可能なのかを考えてみよう。
1) 『日本の企業間競争』第I部「同質的競争と差別化競争の繰返しパターン」

 

2) 競合他社による同質化戦略の失敗例としての、ドライビール戦争

 
focus戦略 – cost focus vs differentiation focus
differentiation focus戦略に基づく製品としてのSONY・PS3
cost focus戦略に基づく製品としての任天堂・Wii

http://www.sanosemi.com/biztech/document/Game-Positioning-Ver4-5.pdfのp.8におけるWiiおよびPS3の製造コスト比較
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2018.04.16 経営技術特論A

1.イノベーションの階層性
1. 技術革新(Technological innovation)
2. ビジネス・イノベーション(Business innovation)

 

ほかに、産業、経済、社会といったレベルでもInnovationを論じることができる。
本授業では、基本的には 技術革新(Technological innovation)を対象とする。

 
2.ビジネス・イノベーションと技術イノベーションを区別する理由

(理由2は当日の授業中には紹介していません。後の授業で取り扱います。)

理由1.新しい技術革新なしでも、ビジネス・イノベーションは遂行可能であること
新発見・新発明がなくてもイノベーションは遂行可能
既存の発見・既存の発明でもイノベーションは遂行可能
 
理由2.技術イノベーションは、その最初期から企業収益に貢献するわけではないこと
初期段階の技術イノベーションは、企業として有意味なビジネスを最初期から提供するわけではない

ex.1 炭素繊維技術に基づくビジネス
 「石の上にも50年 執念で生き残る」(特集 東レ 勝つまでやり切る経営 Part 2)
 『日経ビジネス』2014年10月27日号, pp.34-39
 
3.Business Administration vs Public Administration
経営学部=Faculty of Business Administration
行政=public administration
 
4.イノベーションの分類
product innovation vs (production) process innovation

燃料電池車というproduct innovation
トヨタ生産方式を支える改善(Kaizen)という(production) process innovation
 
5.授業で前提としている基本的発想法

1) MarketとTechnology → New Product

Market (Market Needs)  +  Technology (Technological seeds)
        ↓         ↓
        New Product
 

2) New Productを創る・造る内的構造

事例1

   1.新しい製品コンセプト(どこでも音楽を気軽に聴ける製品)
          ⇓
   2.新しい設計
    2-a 新しい製品機能設計(小型・軽量かつ電源コンセントのない室外でも使える機能)
          ↓
     2-b 新しい製品構造設計(×大型のオープンリール型テープ→小型カセットテープ
             、かつ、×電源コンセント→電池駆動という構造)
          ↓
     2-c 新しい工程設計
          ⇓
   3.新しい生産
 

事例2

   1.新しい製品コンセプト(環境に優しい自動車製品)
          ⇓
   2.新しい設計
    2-a 新しい製品機能設計(CO2を排出しないで走行できる機能)
          ↓
     2-b 新しい製品構造設計(一次電池=燃料電池を使う構造 or 二次電池=充電池を使う構造)
          ↓
     2-c 新しい工程設計
          ⇓
   3.新しい生産
 
6.後期授業で前提としている基本的発想法
Product designに関する基本的思想(構想)としての「製品アーキテクチャ」

 
「組み合わせ」型 = modular architecture – PC製品に典型的なアーキテクチャ(米国や中国が強い)

    vs
    

「擦り合わせ」型 = integral architecture – 普通乗用車製品に典型的なアーキテクチャ(日本が強い)

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パワーハラスメント関連情報

下記事項に関するわかりやすい説明がある。
パワハラの定義
パワハラの6類型
データで見るパワハラ
裁判例を見てみよう
過去の提言・資料等
あかるい職場応援団からのメッセージ
相談窓口のご案内 
 
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障害者差別解消法に対応した「合理的配慮」問題関連資料

井上諭一「障害者差別解消法と大学に求められる対応」『大学時報』2016年3月、pp.66-73

 
 
『教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版] 』のPDFを各章ごとにダウンロード可能
 
国立大学協会(2015)「障害者差別解消法に係る国立大学法人における教職員対応要領(雛形)」
 
障害のある学生の在籍者数、在籍学校数、主な授業支援の状況(大学)p.5、国立大学法人は合理的配慮・職員対応要領が義務、学校法人は合理的配慮は努力義務p.10
 
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参考資料メモ>
高大連携歴史教育研究会(2017)「歴史系用語精選の提案(第一次)」2017年10月

 高大連携歴史教育研究会は、「高校の歴史教育が大学入試の影響で用語の暗記中心の授業形態になっている」、「思考力を育成して生徒に歴史を学ぶ楽しさを実感させられる授業を行う余裕がない」という問題意識のもと、高等学校の歴史教科書の収録用語を精選する方向での教科書改革の実施、および、それに対応して大学入試で出題できる用語も精選させることを目的としている。
 そうした目的に応じて作成された第一次案が、「ガリレオや坂本龍馬など、歴史を大きく動かしたわけではない人名などを削除すべき」としたこの「歴史系用語精選の提案(第一次)」である。

関連参考資料

高等学校歴史教育研究会(2014)『歴史教育における高等学校・大学間接続の抜本的改革を求めて(第1次案) ─  世界史B・日本史Bの用語限定と思考力育成型教育法の強化 』2014年7月
高等学校歴史教育研究会(2014)『歴史教育における高等学校・大学間接続の抜本的改革 ─ アンケート結果と改革の提案』2014年9月、83頁

 
2.高大連携歴史教育研究会(2017)「歴史系用語精選の提案(第一次)」をめぐる報道記事
  1. 氏岡真弓(2017)「龍馬や松陰は不必要? 高校の歴史用語「約半分に」案」朝日新聞デジタル、2017年11月16日
  2. 氏岡真弓(2017)「龍馬・松陰より「理系が食いつく用語」を 歴史教科書案」朝日新聞デジタル、2017年12月4日
  3. 水戸健一(2017)「龍馬 教科書から消えるぜよ 脱暗記へ教員研究会提案」毎日新聞、2017年12月29日
    「精選案は日本史1856語、世界史1835語。日本史では坂本龍馬が「知らなくても明治維新は理解できる」として外されたほか、蘇我馬子、桶狭間の戦い、大岡忠相(越前)、吉田松陰が含まれていない。世界史ではクレオパトラ、マリー・アントワネット、ガリレオ・ガリレイなどが省かれた」ことを紹介している
  4. 吉田晋(2018)「坂本龍馬は教科書に必要か 大政奉還や薩長同盟、史実は」朝日新聞デジタル、2018年1月10日
    「学問の力でいろいろ検証されながら。松陰や龍馬に限らず、学問的にこの人物を入れるのが妥当かどうか、しょっちゅう検証されないといけない」という主張は重要である。
  5. Abema TV(2017)「歴史の教科書から「坂本龍馬」が消える? 東大教授に聞く「歴史にロマンはいらない?」」Abema TIMES、2017.11.14 21:20
    本WEBページにおいて東大史料編纂所教授・本郷和人氏は、「坂本龍馬」が削除された理由に関して、「ある歴史研究者に言わせると坂本龍馬は西郷隆盛の“パシリ”だとする見方もある。歴史学としては西郷隆盛が載っていれば坂本龍馬は必要ないということとでは」と推測するとともに、「クイズのような試験を出す学校に合わせて、“単語を覚えさせるだけの授業が行われてしまっている現状”が悪いのであって坂本龍馬という単語が悪いわけではない。子どもたちの歴史離れが進んでいるのは、はっきり言って今の歴史教科書がつまらないからだと思う。」と主張している。
  6. 河合敦(2017)「「坂本龍馬が教科書から消える」には、大誤報が潜んでいる-「消えても仕方ない」じゃないんですよ」現代ビジネス(講談社)、2017.11.16
    坂本龍馬という人名は、1943年の国定教科書『初等科国史 下』などで登場しており、「坂本龍馬は昔、教科書に載っていなかった」「司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が出版された1960年代半ば頃から、坂本龍馬という人名が登場するようになった」という一部の報道が事実に反する、としている。
  7. 吉川慧(2016)「「脱ゆとり」明確化、高校では「歴史総合」を新設 指導要領改定で困惑の声も」HuffPost News、2016年08月01日
 
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参考資料メモ>
高校の「歴史」教科に関する次期学習指導要領の改訂 – 「歴史総合」、「日本史探求」、「世界史探求」

1.次期学習指導要領における高校の歴史に関する履修教科の改訂
2014年中教審の諮問を受けて高校の学習指導要領が2018年3月に改訂される。その改訂では、高校の歴史教育のあり方が2022年度から下記のように変わる予定である。

現行
 選択必修科目:世界史A(2単位)
 選択科目:世界史B(4単位)

 選択科目:日本史A(2単位)・日本史B(4単位)
 (日本史A、日本史B、地理A、地理Bから1科目を選択必修)

変更後
 必修科目:歴史総合(2単位)
 選択科目:世界史探求(3単位)
 選択科目:日本史探求(3単位)

 
[関連参考WEBページ]
新学習指導要領関連資料
新学習指導要領(2018年3月30日告示、2022年度実施)
 
学習指導要領改訂に関わるパブリック・コメントの実施
 
 
2.高校の「歴史」教科に関する学習指導要領の改訂内容(2018年3月30日告示、2022年度実施)
『高等学校学習指導要領(案)』p.60では、「歴史総合」の内容の一部として、「産業革命と交通・通信手段の革新,中国の開港と日本の開国などを基に,工業化と世界市場の形成を理解すること」が挙げられている。

[関連参考WEBページ]

 
3.高校の歴史に関する学習指導要領改訂をめぐる日本学術会議関連の記事
 
4.高校の歴史に関する学習指導要領改訂をめぐる文部科学省の文書
  1. 文部科学省中央教育審議会(2016)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」2016年12月21日
    「各教科等において習得する知識や技能であるが、個別の事実的な知識のみを指すものではなく、それらが相互に関連付けられ、さらに社会の中で生きて働く知識となるものを含むものである。
     例えば、“何年にこうした出来事が起きた”という歴史上の事実的な知識は、“その出来事はなぜ起こったのか”や“その出来事がどのような影響を及ぼしたのか”を追究する学習の過程を通じて、当時の社会や現代に持つ意味などを含め、知識相互がつながり関連付けられながら習得されていく。それは、各教科等の本質を深く理解するために不可欠となる主要な概念の習得につながるものである。そして、そうした概念が、現代の社会生活にどう関わってくるかを考えていけるようにするための指導も重要である。基礎的・基本的な知識を着実に習得しながら、既存の知識と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、学習内容(特に主要な概念に関するもの)の深い理解と、個別の知識の定着を図るとともに、社会における様々な場面で活用できる概念としていくことが重要となる。」pp.28-29
    「共通必履修科目である「歴史総合」については、(1)②で示した資質・能力を踏まえつつ、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて、近現代の歴史を理解する科目・ 歴史の推移や変化を踏まえ、課題の解決を視野に入れて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目・ 歴史の大きな転換に着目し、単元の基軸となる問いを設け、資料を活用しながら、歴史の学び方(「類似・差異」、「因果関係」に着目する等)を習得する科目とすることが適当である。(別添3-8、別添3-9を参照)」p.134
     
  2. 文部科学省中央教育審議会(2016)上記答申の別添資料3「社会、地理歴史、公民」
    別添3-4 社会科,地理歴史科,公民科における「社会的な見方・考え方」のイメージp.13/28
    「社会的事象の歴史的な見方・考え方」とは「社会的事象を時期,推移などに着目して捉え類似や差異などを明確にしたり事象同士を因果関係などで関連付けたり」することであり、「社会的事象の地理的な見方・考え方」は「社会的事象を位置や空間的な広がりに着目して捉え地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付け」ることである、とされている。
    別添3-4「社会的な見方・考え方」を働かせたイメージの例 PDF pp.15-16/28
    別添3-8 高等学校学習指導要領における「歴史総合」の改訂の方向性① PDF p.19/28
    別添3-9 高等学校学習指導要領における「歴史総合」の改訂の方向性② PDF p.20/28
    別添3-10 高等学校学習指導要領における「日本史探求」の改訂の方向性 PDF p.21/28
    別添3-11 高等学校学習指導要領における「日本史探求」の改訂の方向性 PDF p.22/28
     
  3. 文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室(2017)「今後の学習指導要領改訂に関するスケージュール」2017年5月12日
 
5.高校の学習指導要領改訂をめぐるその他の記事
  1. 原田智仁(2017)「次期学習指導要領の動向:歴史総合の可能性」『世界史のしおり』(帝国書院)2017年度 1学期号、pp.8-9

    「歴史総合」と「世界史探究」「日本史探究」との内容的棲み分けが困難であることを指摘するとともに、日本と世界の歴史的展開を統一的に取り扱えるようなテーマ(例えば、近代化、大衆化、グローバル化、豊かで公正な世界の形成など)で教育することが歴史総合で求めらている、としている。
     
  2. 梅津正美(2017)「次期学習指導要領の動向:「歴史総合」 の実践課題」『世界史のしおり』(帝国書院)2017年度 2学期号、pp.8-9
    テーマの一例として、「技術革新と経営革新:アメリカ・フォードはなぜ成功したのか」が挙げられている。
     
  3. 川手圭一(2017)「「歴史総合」「世界史探究」 ─新科目導入と世界史教育のこれから─」『世界史のしおり』(帝国書院)2017年度 3学期号、pp.8-9
 
6.2011年の高校の学習指導要領改訂の方向性
文部科学省(2014)『高等学校学習指導要領解説 地理歴史編』2009年12月(2014年1月 一部改訂)では、改訂の趣旨が下記のように、21世紀を「知識基盤社会」として捉え、それへの対応力の育成にある、とされている。日本の高校生の問題点として、「OECD(経済協力開発機構)のPISA調査など各種の調査」によれば、読解力に問題があり、「思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用する問題」が苦手であることが指摘されている。

21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時代であると言われている。このような知識基盤社会化やグローバル化は,アイディアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性を増大させている。このような状況において,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことがますます重要になっている。
 
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コモンズの悲劇 vs アンチコモンズの悲劇

1.私的財の必要性・有用性を示す「コモンズの悲劇」 vs 共有財の必要性の必要性・有用性を示す「アンチコモンズの悲劇」
「コモンズの悲劇」で取り上げられているコモンズとしての牧草地は、ある場所の牧草を一頭の牛が食べると、その牛が食べた場所の牧草を他の牛が食べることができない。その意味で、「コモンズの悲劇」問題は「消費における競合性」(rivalrousness)問題でもある。
もちろん一頭の牛が食べる量には一定の限度があるので、牧草地の面積に対してその牧草地にいる牛の数が少ない場合にはそうした「消費における競合性」は顕在的な問題とはならない。
 「コモンズの悲劇」が問題としているのは、牛の頭数が牧草地が許容する限界頭数を超えた場合に生じる状況である。これは「宇宙船地球号」という概念を利用しながらローマクラブが問題提起した人間社会の成長・発展に対する地球資源の有限性問題と同じ論理的構造である。
すなわち、地球環境問題などで問題とされる地球資源の有限性問題は、大気や海などの地球資源が19世紀までの人間社会の「生産=消費」活動レベルでは「消費における競合性」が問題とはならなかったが、20世紀後半以降になり「消費における競合性」が問題となったということを意味している。

[参考図]資源エネルギー庁(2013)「世界のエネルギー消費量と人口の推移」『エネルギー白書』p.8 [pdf版]

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[考察してみよう]
コモンズに該当する具体的対象としては、 地球レベルものから地域社会レベルのものまで多様なものが存在する。したがってコモンズとして捉えることができるすべての具体的対象に関して「コモンズの悲劇」が成立するわけではない。
それはどういうことなのかを具体例を挙げて説明しなさい。すなわち、「コモンズの悲劇」問題が成立しないようなコモンズの具体例を挙げるとともに、コモンズであるにも関わらずなぜ「コモンズの悲劇」問題が成立しないのかを説明しなさい。
 

2.公共財の公共経済学的定義 — 「消費における非-競合性(non-rivalrous)」と「フリーライダーの非-排除性(non-excludable)」という二つの特性を持つ財としての公共財
三省堂『大辞林』では、「公共」という用語は「おおやけのものとして共有すること」として定義されている。また岩波書店『広辞苑』第4版では、「公共財」という用語は「その便益を多くの個人が同時に享受でき、しかも対価の支払者だけに限定できないような財貨・サービス」として定義されている。公共財に関する後者の『広辞苑』第4版の定義は、公共財に関する公共経済学的定義に基づくものである。
公共財(public goods)は、公共経済学においては、「消費における非競合性」「フリーライダーの排除不能性」という二つの特性との関連で定義されている。
そのように定義されている主要な理由のうち、いくつかを下記に挙げる。
 
ポイント1. rivalrousという特性を持つ財に関しては、「利用者から料金を取ることが正当である」と考えられる。
rivalrousな財の利用は制限せざるを得ない(そうでないとコモンズの悲劇と類似の問題が発生する)が、そうした制限の手段の一つが料金の徴収である。首都高速道路の利用料を無料にすると混雑が極めて激しくなり、高速道路としての意味がなくなってしまう。excludable(フリーライダーを排除する)とすることで、すなわち、利用料を払った人だけが利用できるようにすることで、高速道路というgoodsがその本来的機能を果たすことができる。
 そのようにexcludableにできるgoodsに関しては、その提供を政府・自治体・非営利組織など公共的組織のみに限定する意味はあまりない。利用対価や販売代金を取ることができるそうしたgoodsに関しては、なるべく数多くの企業に提供させて、goodsの「質」、「提供可能な量」、「価格」などに関する自由競争をさせる方が社会的により好ましい、と一般には考えられている。

ポイント2. 上記とは逆にnon-rivalrousという特性を持つ財に関しては、財の維持・管理・再生産の費用が「一定数の顧客からの利用料金・販売代金でまかなうことができる」財[すなわち、一定以上の固定費はかかるが変動費がゼロに近い財]であれば、その一定数を超えた顧客・利用者から料金を取らないことも選択肢として考えられる。また財の維持・管理・再生産の費用がほぼゼロに近いような財[すなわち、固定費も変動費もほぼゼロに近い財]であれば、「free riderを排除せず、利用者から料金をまったく取らないことが正当である」と考えられる。
[考察してみよう]明治大学図書館も、その維持・管理・再生産の費用を一定数の学生からの授業料収入でまかなうことができる。そのため、rivalrousにならない範囲内で、free riderの利用を認めている。それは具体的にはどういうことなのかを考えてみよう。
 
ポイント3. free riderを排除できない(利用料金や販売代金を徴収することができない)non-excludableな財に関しては、営利企業による持続的提供は期待できない。非営利組織・政府・自治体など公共的組織に期待するほかない。
広告・宣伝など結果的に自社の売上拡大や営業利益増大につながる場合には、営利企業もnon-excludableな財を提供し続けることができる。しかしそうではなく、結果的にも自社の売上拡大や営業利益増大につながらないようなnon-excludableな財を自社の営業活動の一環として継続的に提供し続けることは一般的には困難である。

料金を支払わずに
利用しようとする
free riderを排除可能
(excludable)
料金を支払わずに
利用しようとする
free riderを排除困難
(non-excludable)
多数の人々による
同時利用が困難
(rivalrous)
私的財
(private goods)
common goods
多数の人々による
同時利用が可能
(non-rivalrous)
club goods 公共財
(public goods)
 
[考察してみよう]
授業では、rivalrousかつnon-excludableなgoods(common goods,Common-pool resource)の例を取り上げなかったが、英語版wikipedia「Common-pool resource」では下記のようにfish stocks, timber, coalが例として挙げられている。
(1) common goods(common-pool resource)に該当するgoodをどれか一つを取り上げて、「それがどのような意味でRivalrousかつNon-excludableな財(goods)とされているのか?」に関して説明をおこなうこと。
(2) 次に、自らがcommon goods(common-pool resource)に該当するものとして取り上げたgoodが、本当にrivalrousかつnon-excludableなgoodであるのかどうかに関して考察をおこなうこと。
 
excludable non-excludable
rivalrous private goods
food, clothing, cars,
parking spaces
common goods
fish stocks, timber, coal
non-rivalrous club goods
cinemas, private parks,
satellite television
public goods
free-to-air television, air,
national defense
[出典]英語版wikipedia「Common-pool resource」,理論的整合性を保つため、Common-pool resourceをcommon goodsとするなど、表現を一部訂正した。

 
3.club goodsの具体例
下記では、上記のポイント2で論じられている「一定以上の固定費はかかるが、変動費がゼロに近い財」という理論的定義に当てはまる具体的事例として、一定の範囲内でnon-rivalrousである(それゆえ一定の会員数に限定する必要がある)とともに、free riderの排除が法的・技術的に可能なexcludableであるclub goodsとしての、TV電波、BS(放送衛星)電波、CS(通信衛星)電波、携帯電波、公衆無線LAN電波などを利用したテレビ放送サービス、動画配信サービスを取り上げる。
 
4.消費における競合性(rivalry, rivalrousness)に関する複数の視点からの議論 — free rider排除の社会的妥当性
 
本日の授業では 「消費における競合性」(rivalrous)概念に関する、下記三つの主要論点の内の第1の論点を主として取り上げた。
 
論点1.「一定限度=許容限度内における消費の非競合性」と「一定限度=許容限度を超えた場合における消費の競合性」
論点2. 同一財における 「消費の非競合性」と「消費の競合性」という二つの特性の共在(利用法・利用場面の差異による特性の違い)
論点3. 「共時」的消費における競合性 vs 「通時」的消費における競合性

 
消費の競合性の相対性という第一の論点に関する理解が必要—「コモンズの悲劇」問題も利用者数が一定以上を超えた時に発生する問題である。一定数以下であれば、消費の競合は問題にならずsustainableな利用が可能である。
個々の座席で見れば、新幹線の指定席や自由席、および、図書館における座席などは、「ある人が利用している座席を他の人が利用できない」という意味のおいて排他的利用が問題となるが、利用者の全体的数が座席数全体に対して相対的に少ない場合には、「ある時間帯の新幹線の便全体、あるいは、図書館全体では、空いている席を必ず見つけて利用できる」という意味において、新幹線の着席利用、および、図書館の着席利用それ自体はrivalrousではない。
 
[考察してみよう]
日本語版ウィキペディア「非競合性」で非競合性を持つgoodsに位置づけられている「映画」、「図書館」についても、そうであるのはある一定の制約条件のもとにおいてであり、実際には競合性が問題となる場合もある。
それはどういうことなのかをわかりやすく説明しなさい。
 
5.free riderの排除可能性(excludability)に関する複数の視点からの議論 — Free rider排除の根拠および方法に関する法的議論(法的権利)、経済的議論(経済的合理性)、技術的議論(技術的可能性)[次回論じる予定の論点]
 
[関連復習事項]
1.スマホの製造メーカーが「無料」で利用できるGoogleのAndroid OS
 
2.公共財(public goods)と情報財(information goods)の共通集合としての公共的情報財(public information goods)
公共財(public goods)の定義と情報財(information goods)の定義および特性の両方を理解することが必要
 
3.情報財(information goods)の定義および特性
情報財を構成する2種類の財・・・「コンテンツ」系情報財と「プログラム」系情報財
情報財の特有性としての、「限界費用の低さ」と「私的占有の困難性」

 
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